
普段私たちが何気なく使っている「ゴム製品」。
タイヤや自動車部品、輪ゴムにいたるまで、現代社会に欠かせない存在です。
では、そのゴムが「何からできているか」をご存知でしょうか?
パラゴムノキなどの樹液が原料となる天然ゴムを除く、多くの合成ゴムの出発点となるのが原油から精製される「ナフサ」という物質です。
「ゴム業界のニュースで『ナフサ価格』という言葉をよく耳にするけれど、実はイマイチ仕組みが分かっていない……」という方は多いのではないでしょうか。
そこで今回は、ゴム業界に身を置くなら絶対に知っておきたい「ナフサの基礎知識」と「ゴムとナフサの深い関係」を解説します!
そもそも「ナフサ」とは?
ナフサ(Naphtha)とは、一言で言えば「石油化学製品の『元(原料)』になる油」の一種のことです。
日本語では「粗製ガソリン」とも呼ばれます。
私たちが使う原油は、そのままでは製品になりません。
原油を加熱し、沸点の違いを利用して蒸留(仕分け)することで、さまざまな成分に分かれます。
原油から生まれる主な成分
・LPガス(一番軽くて気体になりやすい)
・ナフサ(粗製ガソリン) ★ココ!
・灯油・軽油(ディーゼルエンジン車や建設機械などの燃料)
・重油・アスファルト(船の燃料や道路の舗装)
【ポイント】
ナフサはガソリンと成分が非常に近いため「粗製ガソリン」と呼ばれますが、車の燃料ではなく、主としてプラスチックや合成ゴムなどの「石油化学製品の原料」として使われます。
ナフサから「合成ゴム」ができるまでの流れ
では、ドロドロの油であるナフサが、どのようにして弾力のあるゴムになるのでしょうか?
そのプロセスを簡易的な図解イメージで見てみましょう。

1. ナフサを分解する
ナフサに高い熱をかけて分解すると、「エチレン」「プロピレン」「ブタジエン」といった、石油化学製品の基礎的な材料(ビルディングブロック)が生まれます。2. つなぎ合わせてゴムにする
これらの材料を複雑に化学反応(重合)させることで、「合成ゴム(各種ポリマー)」が誕生します。例えば、タイヤによく使われる「スチレンブタジエンゴム(SBR)」の主原料であるブタジエンは、ナフサを分解する過程で抽出される代表的な成分です。
ゴム業界が「ナフサ価格」に一喜一憂する理由

ゴム業界のニュースを見ていると、「ナフサ価格の上昇により、ゴムメーカーが値上げを発表」といった記事をよく見かけます。
なぜこれほどまでにナフサの動きが重要視されるのでしょうか。
理由は大きく分けて3つあります。
①合成ゴムのコストに直結するから
日本の合成ゴムのほとんどは、ナフサを原料として作られています。
そのため、ナフサの価格が上がれば、当然合成ゴムの価格とゴム製品の製造コストもダイレクトに跳ね上がります。
② 原油価格や世界情勢の「鏡」だから
ナフサは原油から作られるため、原油価格(OPECの動向や中東情勢など)や為替(円安・円高)の影響を強く受けます。
つまり、ナフサ価格を見ることで、世界経済やエネルギー市場のトレンドを掴むことができるのです。
③天然ゴムの相場にも影響を与えるから
「ナフサは合成ゴムの原料だから、天然ゴムには関係ないのでは?」と思われがちですが、実は大いに関係があります。
合成ゴムの価格が上がると、「じゃあ代わりに天然ゴムを使おう」という需要へシフトするため、結果的に天然ゴムの価格も釣られて上昇することが多いのです。
4. 日本のゴム業界が抱える「ナフサ」の課題
現在(2026年6月時点)、日本のゴム業界や化学業界において、ナフサを取り巻く環境は大きな転換期を迎えています。

海外(輸入ナフサ)依存のリスク
日本は国産ナフサのほか、ナフサの多くを海外(中東から約4割、アジアから約2割)からの輸入に頼っています。
そのため、地政学リスクや物流の混乱による影響を受けやすいのが弱点です。
脱炭素(カーボンニュートラル)への挑戦
石油由来であるナフサは、製造・廃棄の過程でCO2を排出します。
そのため、現在ゴム業界では、植物由来の成分からナフサの代わりを作る「バイオナフサ」の活用や、リサイクル技術の開発が急ピッチで進められています。
まとめ:ナフサを知ることは、ゴム業界の未来を知ること
普段何気なく使っているゴム製品のルーツをたどると、原油から精製される「ナフサ」に突き当たります。
・ナフサは合成ゴムの「生みの親」である
・ナフサの価格は、ゴム全体の市場相場を左右する
・現在は脱炭素に向けて「バイオナフサ」への注目が集まっている
ゴム業界でビジネスを行う上で、ナフサの動向を追うことは、業界の「いま」と「未来」予測することに繋がります。
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